バドミントンは手首?

2019年12月19日

 皆さん、こんにちは!今回は、「バドミントでは、手首を使ってはいけません」のリニューアルです。この記事は、バドミントン界特有の「手首論」と「角度のあるショット」を打破しようと思い、書いた記事でした。久しぶりに誤字脱字などないかをチェックして改訂していこうと思ったら、何故か記事が表れず真っ白な画面のまま…。何故だ…。よりによって、その記事だけ表れない。仕方がないので、書き直そうと思った次第です。では、早速進めていきましょう。

1.バドミントンは、本当に手首か!?

 「バドミントンは手首」という通説は、誰もが一度は聞いたことがあるでしょう。これは、「バドミントン(で)は手首を使わない」が、正解です。「いや、そんなことはないでしょう。手首を使いまくりですよ。」という方は、下の動画をご覧頂けると納得して頂ける筈です。

見事なまでに世界のトップ選手たちはスマッシュを打つ時に手首を使っていないのが、お分かり頂けるでしょうか?

 世界のトップランカーは、スマッシュを打つ時に手首を全く曲げていないのが、お分かりいただけたでしょうか?出てくる選手はみんな、手首を反ったまま固定し、ラケットと腕が約90度を維持したまま打っています。シャトルを捉える位置も、手の上ではなく手からシャトル2個くらい横(内側)です。そう、「バドミントンは手首」は、逆の意味で正しい表現なのです。「バドミントンは手首(を使わない)」もしくは、「バドミントンは手首(を反ったまま固定して打つ)」という意味であって、決して招き猫のように手首を曲げて打つという意味ではありません。ある意味「バドミントンは手首」という表現は正しいのですが、あまりにも初心者の方々に誤解を与えます。

2.2020年にバドミントンの手首論は消滅!?

 ただ、最近は根強かった「手首論」に変化が見られるようになりました。Googleで「バドミントン 手首」と検索すると、最初の1ページ目に表示されるブログの記事は、全て手首論を否定して回内運動の重要性について述べています。これは、2018年には見られなかった現象です。様々な方の頑張りがあったおかげで、正しい情報がもたらされている様子です。もしかすると、バドミントンの手首論は大変革を迎え、2020年末には消滅しているかもしれません。

 速いスマッシュを打つ為のヒントを与えてくれるのは、マレーシアのGoh V Shem選手です。彼は、上の動画の選手達よりも、もうシャトル3個くらい手の横でシャトルを当てています。動画では、ゴー選手の肘の高さがどうだとか、ジャンプした時の足の角度だとかいろいろ分析しています。しかし、1番大切なのは、手の横でシャトルを当てることです。決して手の真上でシャトルを当ててはいけません。

 私は、ゴー選手の特徴は3つあると思います。

1.他の選手よりもシャトル1個分更に手から離れた位置で当てている。

2.側屈を有効に取り入れ、肩関節の可動域を増してスイングをさらに加速させている。

3.打ち終わった後、ラケットを握っている手は体の外側にある。

 これら3つの要素を取り入れることにより、上腕の内旋運動と前腕の回内運動を最大限活用しています。だから速い!速いスマッシュを打つコツは、手首を固定すること!そして、手の横であてることなのです。世の中に流布している「手首論」は間違っており、手首を使いまくれば決して速いスマッシュを打てないばかりか、怪我をする可能性が増すだけです。

3.野球やテニスと間違えた?

 何故、ここまで手首論は根付いてしまったのでしょうか?『「バドミントン」現代スポーツコーチ実践講座12』(著:阿部一佳 筑波大学名誉教授)によれば、1980年代には世界バドミントンコーチ会議において、手首論は否定されたといいます。なのに、日本では随分と長らく間違った認識が、幅を効かせています。以前よりは改善されていますが、未だに書籍などを見ると完全には脱却できていない様子です。これまでの日本は、「手首を使え!」と教えられて偶然回内運動で打てた人によって成り立ってきたと言えるのではないでしょうか?本人は「これが手首を使うということか!」と思ったものだから、他人にも「手首を使って!」と教える悪循環です。国語力が高い人は間違いに気付くのですが、相手が上手いので言い返せない状況が続いてきたのでしょう。私も、手首論を信奉したものですが、もちろんその期間は上手くなりませんでした。回内運動を有効活用してから、スマッシュを打てるようになりました。

 私は、野球やテニスと勘違いしている人が多いのだと思います。ボールを投げるには、回内運動も織り交ぜながら手首のスナップを効かす(背屈と掌屈)ことが必要です。人間としては、こっちの方が本来の姿だと言えるでしょう。

 テニスのサーブに例えながら教える人をたまにみかけますが、これも誤解を与えます。たしかによく似てますが、まずテニスのラケットは重いです。男性用ならば300gを超えます(バドミントンのラケットの主流は、80g以下)。回内運動を駆使して振れば、肘を傷めます。

 それと、テニスではカットをかけないとサービスの範囲にボールが入りません。テニスのネットの高さは、1.07mです。サービスラインからネットまでは6.4m、ネットからベースラインまでは18.28mあります。三角法を使って計算すると、テニスでは身長が2m16㎝以上ないと完全フラットサーブは打てません。だから、テニスでは回内運動を使いつつ手首を少し曲げてカットをかけながら打たないといけないのです。(これは、錦織選手が手首の怪我で悩まされた理由の一つでしょう。)

4.手首論と回内運動を折半した打ち方

 手首論が主流だった時代に生み出された妥協の産物みたい打ち方が、これです。手の上で当ててつつも、回内運動も使える打ち方です。

特に女性選手に多い打ち方です。

 この当て方だと、腕とラケットの角度は120度ぐらいになります。回内運動は前腕を回転軸とするものですから、これでも打てます。実際に左右に振られたりすると、特にフォアハンド側でこの打ち方になります。

 ただし、この打ち方は少し損をしています。皆さん、「力のモーメント」はご存知でしょうか?回転軸と回転させる力は、その二つの距離に影響されるというものです。ラケットと前腕が90度の場合と120度の場合では、シャトルに伝わる力が変化します。下の写真のようにグー握りにしてラケットと前腕を直角にすれば、前腕から最も遠い位置でシャトルを捉えることになります。120度の場合に比べ、前腕から打点までの高さには15㎝ほどの違いがありましたあああ。つまり、「15㎝×○○㎏」分の力を損してるということです。

グー握りにすれば、シャトルは最も前腕から遠い位置で当たる
ラケットを寝かせてしまうと、その分力が逃げる

 山口茜選手は、女性選手の中で最もグー握りを有効に活用していると思います。決して腕が長い方ではないにも関わらず、あそこまで力強いスマッシュやドリブンクリアーを打てるのは、ラケットと腕を直角にして力のモーメントを有効に駆使しているからです。日本の女性選手は特に120度の場合の打ち方が多いですが、同じ筋力で打つのなら断然山口選手のように打つ方が効果的です。

5.角度って、そんなにつくのか?

 テレビなどで解説を聞いていると、時々「角度のあるショット」という表現が聞こえてきます。私は、これもある程度は疑うほうが良いと考えています。本当にそれほど角度をつけられるのか?と思うのです。 では、先ほどの三角法を用いて考察してみましょう。バドミントンのネットの高さは、1.55mです。ネットからバックバウンダリーラインまでは6.7mで、ホームポジション付近はネットから約4mです。角度は21.18度で、打点は頭からプラス50㎝とすれば、400:155=670:(身長+50)という計算式になるでしょう。すると、必要な身長は209.625㎝となりました。つまり、本当に角度のあるスマッシュを打とうと思ったら、身長が2m近くないといけないということです。(間違ってたらすみません。)

 バドミントンで大事なのは、スマッシュをいろいろな高さに散らしておくことです。いつも角度のあるスマッシュばかり打っていては、捕られます。身長が高い選手だって、いつも相手の足元にスマッシュを打つわけではありません。シングルスでストレートにスマッシュを打つ時は、わざと浮かせてアウトと思わせますし、クロス方向には角度優先でスマッシュを打つと決まり易いというセオリーがあります。

 ただ、シャトルはひじょうに減速しやすいものです。なので、カットをかけたり、弾くようにして振って”軽い”スマッシュを飛ばせば、減速して「角度のあるスマッシュ」は打てます。これは、テニスにはない特徴でしょう。急激にシャトルが減速したために、角度があるショットのように見えるという表現の方が良いかもしれませんが、身長が190㎝はなくとも、工夫次第で角度のあるショットは打てます。おっと、角度をつけようとして間違っても手首をヘニャっと曲げる「招き猫打ち」は、してはいけませんよ。ミスをするだけです。

 さて、いろいろ書きましたが、如何だったでしょうか?三角法の計算が間違っているようでしたら、教えていただくと幸いです。それにしても、何故に日本ではここまで「手首論」が蔓延ったのか?なかなか興味深いテーマです。

 次回は、バックハンドでドライブやレシーブを打つコツを紹介したいと思います。最後までお読み頂き、ありがとうございました!